症状固定について解説| 具体例やタイミングの重要性・注意点とは
交通事故の被害に遭われた方は必ず病院に行って診察を受けましょう。そして継続的な治療を受けるべきです。もし後遺症が残ったときはその症状に合った損害賠償請求を行うことになりますが、そのためには「症状が固定した」といえる状態まで治療をしないといけないためです。
交通事故における慰謝料請求や逸失利益の請求の場面では、この「症状固定」が重要な概念となります。
ここで具体例を挙げて解説をしていきますので参考にしてください。
症状固定とは
症状固定とは、「治療をそれ以上継続しても回復する見込みがない場合の、残された症状」を意味します。
この身体に残された症状はいわゆる後遺症のことですが、医学的な知見に基づく医療を持ってしても改善されなくなったその事実を「症状固定」と呼びます。
リハビリを行うなどして一時的に症状の改善が見られるとしても、その回復が維持されなければリハビリ前の状態で症状固定がしていると評価されます。
また、物理的なことだけでなく精神障害についても症状固定と呼ぶことがあります。
具体例
切り傷や骨折などは時間の経過によって回復する見込みが高いです。
ただ、療養を継続してもその箇所に疼痛が残っているとき、その状態で症状固定として捉え、損害賠償請求額の算定要素に加えます。
他にも次のようなケースで「症状固定」と呼ぶことができます。
例1)頭部打撲によって外傷を受けた。治療を受けることで傷口は治ったが、身体に麻痺の症状が出ている。
その後も療養を続けたものの麻痺の程度に改善が見られない。
例2)交通事故で腰あたりに強い衝撃を受けた。治療を継続したが、腰部捻挫をきっかけに慢性的な腰痛に悩まされるようになった。
例3)事故直後から運動障害の症状が現れており、理学療法を受けるとそのたび運動障害の改善が見られるが、数日経過すると元の状態に戻ってしまう。
症状固定後に残った症状は「後遺障害」
症状固定と判定された場合、一般的には「後遺症が残った」などと表現することもありますが、交通事故における損害賠償請求の問題においては「後遺障害」であることがポイントになります。
一般用語としての後遺症に当てはまる場合であっても、後遺障害としての認定を受けなければ十分な賠償金を受け取ることができません。
特定の症状に該当しており所定の手続を行うことで後遺障害としての認定を受けられ、等級が与えられます。
この等級に応じて①後遺障害慰謝料や②逸失利益の大きさが変わってくるのです。
後遺障害慰謝料の請求に必要
交通事故により身体的・精神的苦痛を受けた場合、その損害分を「慰謝料」として請求できます。
怪我を負ったこと、治療に伴う苦痛については傷害慰謝料(または入通院慰謝料とも呼ぶ。)としての請求が可能です。
その上さらに、後遺障害と認定される程度の症状固定があったときは後遺障害慰謝料の請求をすることもできます。
後遺障害の等級として、第1級~第14級、そして介護を要する場合の第1級および第2級の枠組みが設けられています。そしてこの等級に対応する形で後遺障害慰謝料の相場が定まるのです。
自賠責保険から支払いを受ける場合、任意保険から支払いを受ける場合、裁判で加害者側と争う場合とで金額は大きく異なります。
任意保険からの支払いについては各保険会社の内部的な算定基準に基づくため金額は明らかになっていません。
ただ、自賠責保険基準と裁判基準に基づく算定額の間に位置する傾向にあります。
例えば後遺障害等級第1級の場合、自賠責保険基準だと「1,150万円」ですが、裁判基準だと「2,800万円」です。
第2級の場合、自賠責保険基準で「998万円」、裁判基準で「2370万円」と大きく差が開いていることが分かります。
比較的認定割合の高い等級、第12級~第14級については次の通りです。
後遺障害等級と後遺障害慰謝料の金額
| 自賠責保険基準の場合 | 裁判基準の場合 |
---|---|---|
第12級 | 94万円 | 290万円 |
第13級 | 57万円 | 180万円 |
第14級 | 32万円 | 110万円 |
逸失利益の請求に必要
交通事故による被害は身体に対するもの、精神的なショックだけではありません。入院を要する場合はその間仕事ができず、収入が減ってしまうこともあるでしょう。また後遺障害によってその後の仕事に悪影響が及ぶこともあります。
これらの影響も考慮して損害賠償額は定まります。
入院等によって働くことができず実害が発生した分については「休業損害」と呼ばれ、将来に渡って起こり得る損失分については「逸失利益」と呼ばれます。
症状固定を経て後遺障害の認定を受けると後者の逸失利益についての請求ができるようになり、これを請求できるかどうかで賠償額全体に大きな差がついてしまいます。
逸失利益の金額を求めるときは一般的に次の計算式が運用されており、このうちの「労働能力喪失率」に後遺障害の等級が効いてきます。
逸失利益の金額 = 基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数
- 基礎収入:現在の収入の大きさに対応する。
- 労働能力喪失率:交通事故で失った労働能力の割合を表す。後遺障害の等級が高い(固定した症状が重い)ほど、喪失した労働能力が高いと評価される。
- ライプニッツ係数:「まだ得るはずではなかった金銭が得られる」という利益分を控除するための係数。
症状固定については医師と弁護士を頼る
症状固定の判定は、上述の通り後遺障害等級の認定に大きく影響するものです。
また治療費の請求額にも関わるものです。症状固定と認められるとそれ以上治療費を出す必要性がないことを意味しますので、加害者側による治療費の打ち切りができてしまいます。
多くの場合加害者側の任意保険会社と示談交渉を進めることになりますが、その保険会社が早めに治療費を打ち切るため、症状固定の時期を早めようとはたらきかけてくるケースもあります。
そこで安易に相手方の主張を受け入れないように注意しましょう。
損害賠償額は保険会社などが決められるものではなく、示談はあくまで対等な立場での交渉に過ぎません。
少なくとも症状固定については医師に判断してもらう必要があります。
また、症状固定や後遺障害に関する手続や交渉に関しては弁護士にフォローしてもらうことが望ましいです。
弁護士を味方につけていれば交渉の窓口になってもらうことができ、不利な状況に追い込まれるリスクも回避しやすくなります。
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資格者紹介

伊東 達也Tatsuya Ito
ご相談者様のお話を丁寧にお伺いし、最善の解決策をご提案いたします。
交通事故、相続、借金でお困りの時は、ひとりで悩まずにお気軽にご相談ください。
- 所属
-
- 刑事弁護センター 副委員長
- 司法問題対策等委員会 委員長
- 広報委員会 委員
- 静岡県留置施設視察委員
- 常葉大学非常勤講師(倒産法)
- 経歴
-
- 1982(昭和57)年 1月 静岡県静岡市 生まれ
- 2000(平成12)年 3月 静岡県立静岡高等学校卒業
- 2004(平成16)年 3月 千葉大学法経学部(現 法政経学部)卒業
- 2011(平成23)年 3月 静岡大学法科大学院卒業
- 2011(平成23)年 9月 司法試験合格(修習:新65期)
- 2013(平成25)年 4月 静岡法律事務所入所
Office Overview
事務所概要
名称 | 静岡法律事務所 |
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資格者氏名 | 伊東 達也(いとう たつや) |
所在地 | 〒420-0867 静岡県静岡市葵区馬場町43-1 |
連絡先 | TEL:050-3177-2484 伊東 達也 宛にご連絡ください |
対応時間 | 平日 9:00~17:30(事前予約で時間外も対応可能です) |
定休日 | 土・日・祝(事前予約で休日も対応可能です) |
アクセス | JR静岡駅よりバス利用で約10分、「八千代町」バス停より徒歩3分 新静岡駅よりバス利用で約6分、「八千代町」バス停より徒歩3分 駐車場あり |